最近買った本2冊:
山野井泰史「垂直の記憶:岩と雪の7章」山と溪谷社,2004年.
最近ヒマラヤ(7950mの高峰のくせにやけに無名なのは,チョモランマのそばという不遇な位置にあるため)のギャチュン・カンという難峰で夫婦ともども奇跡の生還を果たし,両手両足あわせて10本の指を凍傷で失った著者の,これまでの半生の(他人から見ると)超人的な登攀をつづった手記.
ほぼ全ページ「今日のことば」に使えそうな表現が連続します.
あがたしは,よく気に入った表現のあるページの角を折る癖があるのですが,この本についてはもう最初の数ページ読んだだけでそれはやめました.そういう表現のないページを探すほうが難しい.
これを読んで思うことはまたいつか記すとして,冒頭に1/2ページで短く書いてある「地形用語解説」の見出し語がちょっと面白い.皆様はいくつわかりますか?:
オーバーハング/カンテ/クラック/クーロワール/懸垂氷河/サイドモレーン/スラブ/雪田/雪庇/セラック/チムニー/ディエードル/テラス/ヒドンクレバス/ピナクル/プラトー/フレーク/ヘッドウォール/ベルクシュルント/ベルグラ/ボルダー/モレーン/リッジ/ルンゼ/ロックバンド
もっとも,「地形」用語しか出ていないのだけど,本文中にはずいぶんと「用具」の用語が出てくるんですよね.これは解説がありません.まぁ知らなければ読めないほどでもないけど,バイル/ピトン/ロープ(これはさすがに皆知ってるか)/ストック/ピッケル/ギア/登高器/ピック/コッパーヘッド/ポータレッジ/ラープ/ナッツ・・・を知っているとより興味深く読めるでしょう.
てか,それらを知っている人が読者対象なのか?それにしては地形解説がわざわざついているのは不思議だ.
余談:
フリークライミング・スポーツクライミングやボルダリングになると,またさらに別のジャンルの特殊用語が入ってきます.たとえばホールドの形状についてだけでも,思いつくままにあげてゆくと
コルネ/カチ/ガバ/ポケット/オフウィドス/ルーフ/狸の腹/ピンチ/サイドプル/バケット/砂時計/ジャグ/ハリボテ/饅頭
他に,ムーブ(動きのこと.なぜかモーションとは言わない)については
ランジ/デッドポイント/シットダウン(スタート)/クロス/木村ステップ/キョン/ガストン/アーケ/タンデュ/出前持ち/かえる足/ハイステップ/ニーバー/トウフック/ヒールフック/マントル/トラバース/スメア
と膨大な数になります.
本題に帰ると:
もしかして,用具の名前は知ってるがアルパインに行ってないイマドキのフリークライマーが読者想定層なのかも?と気づきました.
ピット・シューベルト著,黒沢孝夫訳「続・生と死の分岐点」山と溪谷社,2004年
わが国の登山界に衝撃を与えた著の新版.今回もパワー十分.ドイツ山岳会(DAV)が総力を挙げてあつめた本当の事故の実例とその詳細な分析. 山に「住む」われわれがいかに危険と隣りあわせになっているか,いかにくだらないミスが致命的な事故につながるか,まざまざと知らせてくれます. が,よく考えたらあらゆる交通事故もそういう性格を持ってるんですよね.
章の名前を見ているだけで楽しいので書いておきましょう:
山歩き/循環器/生き延びる力/登攀路での落雷/登攀路での落石/人工壁から高山岳へ/ロープの耐久性/確保点での自己確保/テープ結び/粘着テープ/懸垂下降/片方のロープだけで!:案外多い勘違い/エイト環がカラビナを押し開ける/ビレイヤーの法的責任/トップロープ・ボルト/スリングの融解損傷/その他の事故/ダーウィン賞/危険中毒/他者の間違い/九死に一生/山岳救助隊/山での飲酒/奇妙な事件/おわりに
「ダーウィン賞」というのがすこし説明が必要でしょうか.これは毎年,世界でもっとも奇妙な,あるいは思慮を欠いた行動による亡くなり方をした人を「表彰」するという賞です.http://www.darwinawards.com/がホームページです.山岳の世界でも,「なんでこんなことしたの?」ということが原因になるような事故もおきています.
深刻な事故写真・精妙な技術写真とともに,ユーモラスなイラストがなんともいえぬコントラストを描いている不思議な本です.
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